執筆:三宅 智啓 弁護士  

1. はじめに

  令和2525日、全国的に緊急事態宣言が解除されました。しかし、未だ新型コロナウイルスの感染収束は見通せない状況です。現在、私たちは感染拡大の防止と経済活動の両立が求められる難しい時期にいます。今回は、今年度の未上場会社の定時株主総会をテーマとします。

2. 株主及び取締役の出席

(1) 株主総会出席の自粛のお願い
  多数の株主が会場に来場した場合、3つの密(密閉・密集・密接)が生じる恐れがあります。そのため、今年度の株主総会に限っては、会場への来場を控えるよう株主にお願いすることは可能だと考えられます 。また、同様の前提のもと、株主が来場する場合マスクの着用を必須とすることや、熱や咳のある株主の出席を拒否するなど、感染防止に必要な制限を設けることも可能です 。ただし、会場でのトラブルを防ぐため、このような制限措置を設ける場合、株主総会招集通知等で事前に制限の内容を案内しておくべきでしょう。また、定款に特別の定めがなくても、株主や取締役がオンラインによって参加する機会を設けることも可能です。ただし 、株主が一切来場しない場合でも、実際の会場を設け、会場でも報告や採決を行う必要があると考えられています。 

(2) 取締役兼株主の出席と株主平等原則
  未上場会社の場合、取締役が株主でもある場合が多いと思われます。株主兼取締役が取締役と株主の両方の立場で株主総会に参加する場合、株主平等原則との関係には注意が必要です。
株主に会場への来場を控えるお願いをする場合であっても、一般の株主の出席を認めていないわけではありません。そのため、取締役兼株主が実際に会場に出席したとしても、株主平等原則には違反しないと考えられます 。また、株主を会社の第1会議室に案内し、取締役兼株主は第2会議室に出席し、両会議室をオンラインや内線電話で接続する場合にも、取締役兼株主にのみ特別の利便性が与えられているとは言いにくいです。そのため、基本的には株主平等原則に違反しないと考えられます。
しかし、在宅勤務の関係上、取締役兼株主が自宅から株主総会にオンライン出席する場合、株主平等原則の観点から、他の株主にも同様に自宅からのオンライン参加を認めたほうが無難です。

3. 計算書類の作成未了

(1)  定時株主総会の開催延期
  緊急事態宣言期間中事業活動が制限されていましたので、定款で定める定時株主総会の時期までに計算書類の作成が間に合わない場合もありえます。定時株主総会の開催時期に関する定款の定めは、天災等の非常事態にも画一的に適用されることを要求する趣旨ではないと解されます。そのため、非常事態が解消された後、合理的な期間内に定時株主総会を開催すればよいと解されます 。定時株主総会を延期した場合の取扱いは以下のとおりです。

(2) 役員の任期
  改選期にある役員の任期は、延期後の定時株主総会の終結の時までとなります。

(3) 配当
  配当を行う場合、2つの方法が考えられます。第1の方法は、延期後の定時株主総会で配当決議を行う方法です。第2の方法は、計算書類が未確定のまま、通常の定時株主総会の時期に、株主総会を開催し、配当決議を行う方法です。分配可能額は、計算書類が確定した事業年度のうち最も遅いものを基礎として計算します。そのため、前期の計算書類が確定する前までは、前々期の計算書類を基礎として計算します。
ただし、定時株主総会以外において配当決定をし、その後の決算で欠損が生じた場合、取締役には欠損填補責任が生じる場合があります。そのため、第2の方法をとる際は、最新の経営状況を確認し、欠損がでないよう注意が必要です。

(4) 基準日
  株主総会で権利行使のできる株主について定める基準日は、株主総会の日前3か月以内でなければなりません 。そのため、定款に定める基準日から3か月を超えた時期に定時株主総会を延期する場合は、新たに基準日を定め、当該基準日の2週間前までに当該基準日及び基準日株主が行使することができる権利の内容の公告が必要です 

4. 最後に

  現在の情勢のもと、変則的な株主総会の運営が必要となる場面もあるでしょう。他方で、緊急事態宣言が解除され、株主からの正常な株主総会実施の要望も高まると予想されます。計算書類の作成やオンライン環境の整備など、企業活動を行う上では、その準備のために一定の時間を要することは言うまでもありません。しかし、これら企業内部での準備の苦労は、必ずしも株主の目に触れるものではありません。非常事態であるからこそ、刻一刻と変化する情勢の中で、いつどのような状況を踏まえ、どのような決定を行ったのかを記録することが重要です。形式的には定款等に反する場合など、変則的な会社運営を行う際には、その必要性を株主に説明し、理解を求めることが望まれます。

以上