執筆:鈴木 啓一 弁護士  

1. はじめに

  緊急事態宣言の解除後、令和2年6月11日に「東京アラート」が終了し、東京都では令和2年6月19日に休業要請を全面解除するなど、行政による休業要請は緩和される方向へ向かっています。しかしながら、新型コロナウィルスの感染者は日々報告され、流行の第2波への危惧も払拭されていません。そこで本稿では、今後新型コロナウィルスの新たな流行が発生し、再び行政による協力依頼や要請などを受けて営業を自粛した際に、使用者が労働者を休業させる場合の留意点について、あらためて確認します。

2. 休業手当の取り扱い

(1) 労働基準法の休業手当の取り扱い 
  労働基準法第26条では、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合には、使用者は休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければなりませんが、不可抗力による休業の場合は、使用者に休業手当の支払義務はありません。ここでいう不可抗力とは、厚生労働省の解釈によると、①その原因が事業の外部より発生した事故であること、②事業主が通常の経営者としての最大の注意を尽くしてもなお避けることができない事故であることの2つの要件を満たす必要があります。しかしながら、新型コロナウィルスによる休業が不可抗力に当たるかどうかは判断が非常に難しいものがあります。厚生労働省も、休業手当の要否については個別具体的な事情を踏まえた総合的な判断が必要になる旨解釈を示したうえで、休業を余儀なくされた場合にも、使用者に対し、労使がよく話し合い休業中の手当の水準、休業日や休業時間の設定等について、労働者の不利益を回避する努力を行うことを要請しています。

(2) 雇用調整助成金の活用 
  このように、労働基準法の休業手当の要否の判断は非常に難しいものがあります。そこで、国は、労働基準法上の休業手当の要否にかかわらず、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主に対しては、事業主の支払った休業手当の額に応じて支払われる雇用調整助成金を創設した。国は、解雇等を行わず雇用を維持する企業に対し、正規雇用・非正規雇用にかかわらず、助成率を中小企業は90%、大企業でも75%に引き上げるなどの特例措置を講じています。また、都道府県レベルでは、都道府県知事から休業等の要請を受けた中小企業が解雇等を行わず雇用を維持している場合であって、100%の休業手当を支払っているなど一定の要件を満たす場合には、休業手当全体の助成率を特例的に100%にするなど、事業者の支援を行っていいます。現時点では、法的なリスクを避けるという観点からは、労働者に対し、休業手当を支払いつつ、雇用調整助成金を活用することが望ましい対応方法と考えられます。 

(3) 特別休暇制度の導入 
  また、新型コロナウイルスに関連して、労働者が安心して休めるよう、有給の特別休暇制度を設けることも休業に対する対応方法の一つです。有給の特別休暇制度を設ける場合には、労働者が安心して休めるよう就業規則に定めるなどにより、労働者に周知することが必要となります。就業規則の定め方については、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)が相談を受け付けています。

3. アルバイト・パートタイム労働者

  アルバイトやパートタイム労働者、派遣労働者、有期契約労働者も労働基準法上の労働者である以上、休業手当の支払いや特別休暇制度の適用(特別休暇制度を導入した場合)が必要となります。
なお、特別休暇制度等の法定外の休暇制度を設ける場合、非正規雇用であることのみを理由に、一律に対象から除外することは、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保を目指して改正されたパートタイム・有期雇用労働法及び労働者派遣法の規定(大企業と派遣会社は令和2年4月、中小企業は令和3年4月からの施行)に違反する可能性があることから注意を要します。

4. 休業者への直接給付

  本稿を作成中の令和2年612日、使用者から休業手当を受け取れない労働者に対し、新たな給付制度を設ける雇用保険法の臨時特例法が参議院本会議で可決、成立しました。使用者が申請する雇用調整助成金と異なり、労働者が直接申請する仕組みで、遅くとも7月末までに支給が始まる見通しです。この特例法では、失業手当の給付日数についても、最大60日延長します。

5. 最後に

  新型コロナウィルスの新たな流行が発生し、再び行政による協力依頼や要請などを受けて営業を自粛し、労働者の休業を余儀なくされた場合に備え、今後も国・都道府県レベルの雇用維持のための制度の動向に気を配っていく必要があります。

以上