執筆:池田 悠二 弁護士  

 

 令和3年6月9日、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」の改正案が成立しました。本改正により、中小企業者において、所在不明株主の株式を競売、売却・買取(以下「競売等」といいます。)する会社法上の手続に必要となる期間が5年から1年に短縮できるケースが認められました。期間の短縮には、「一部株主が所在不明であるため事業承継が困難となっている旨の認定」を受ける必要があります。本改正によって、所在不明株主の株式集約のハードルが下がり、株式集約がボトルネックとなっていた事業承継やM&Aに好影響があると考えられます。以下、概要を紹介します。

〇内容
所在不明株主の株式の競売等のために要する期間が「5年」から「1年」に短縮されます。

 中小企業においては、株主に複数回相続が発生するなどして株主の所在が不明となるケースがあります。こうした所在不明株主の株式を集約する方策として、会社法197条に基づく株式の競売等の手続が用意されているものの、5年という期間要件が利用の障壁になっていました。
 通常は、所在不明株主又は登録株式質権者(以下「所在不明株主等」といいます。)が有する株式の競売等を行うためには、所在不明株主等に対して通知又は催告が到達しない期間及び所在不明株主等が剰余金の配当を受領しない期間が、5年以上継続していることが必要です。本改正により、経済産業大臣により下記認定を受けた株式会社(「特例株式会社」といいます。)においては、当該期間が1年に短縮されることになりました。
※競売等を行うためには、この他に異議申立の公告(3月以上)及び所在不明株主等への催告が必要です。

〇要件
経済産業大臣により下記①及び②に該当する者として認定を受けることが必要です。

①中小企業者(株式会社に限る。)の代表者が、年齢、健康状態その他の事情により、継続的かつ安定的に経営を行うことが困難であるため、当該中小企業者の事業活動の継続に支障が生じていること
②一部の株主の所在が不明であることにより、その経営を当該代表者以外の者(「株式会社事業後継者」といいます。)に円滑に承継させることが困難であること
※経済産業大臣による認定手続については、施行までに定められるものと思われます。

〇施行日
公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行されます。

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