弁護士法人Y&P法律事務所

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2022. 05.02 [ リーガルニュース ]

所有者不明土地に関する不動産登記法の改正~相続登記の義務化~

執筆:池田 悠二

所有者不明土地に関する令和3年4月改正不動産登記法の施行日が決定され、令和6年4月1日から、相続や遺贈によって不動産を取得した相続人について、相続発生から3年以内に相続登記を申請することが義務付けられることとなりました

 施行日前に相続が開始していた場合についても、相続登記の申請が義務付けられる点に留意が必要です

令和6年4月1日から施行される不動産登記制度の内容

これまで、相続登記の申請は義務ではなかったため、相続登記がされずに放置された土地が、土地の利用・活用を阻害し隣接土地への悪影響を及ぼす所有者不明土地の発生の大きな要因となっていました。そこで、所有者不明土地の発生予防及び利用の円滑化の観点から、不動産登記制度が以下のように見直されることとなりました。

 1.相続登記の申請の義務化

相続や遺贈により不動産を取得した相続人は①自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、②その所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請することが義務付けられました

▹ 相続人の一部の者が相続放棄をした場合には、他の相続人に対し、相続放棄を知った日から3年以内に相​続放棄後の割合による相続登記の申請をすることが義務付けられました。

正当な理由がないのに相続登記の申請を怠ったときは、10万円以下の過料の罰則があります。

 2.「相続人申告登記」の新設

▹ 相続開始から3年以内に遺産分割が成立しない場合に、①所有権の登記名義人について相続が開始した旨と②自らが相続人である旨を登記官に申し出ることで、相続登記の申請義務を履行したものとみなされます。なお、申出を受けた登記官は、職権で付記登記を行います。

※相続人が複数存在する場合でも、法定相続人の範囲及び法定相続分の割合を確定することなく、特定の相続人が単独で申し出ることが可能です(他の相続人の分も含めた代理申出も可)。
※「相続人申告登記」は付記登記であり、相続を原因とする所有権移転登記ではないので、第三者に自己の権利(所有権)を主張できる効力(対抗力)はありません。

相続人申告登記後に遺産分割が成立した場合には、遺産分割によって不動産の所有権を取得した相続人は、当該遺産分割の日から3年以内に、所有権移転登記の申請をすることが義務付けられました

正当な理由がないのに所有権移転登記の申請を怠ったときは、10万円以下の過料の罰則があります。

施行日前の相続に関する留意点

 施行日前に相続が開始していた場合についても、相続人に対して相続登記の申請が義務付けられます施行日(令和6年4月1日)と要件を充足した日のいずれか遅い日から3年以内に相続登記の申請を行わなければなりません。
そのため、施行日前に開始した相続であって、遺言執行は終了しているものの相続登記を行っていない場合や、遺産分割は成立しているものの相続登記を行っていない場合には、令和9年3月31日までに相続登記の申請を行わなければなりません
また、施行日前に開始した相続であって、遺産分割が成立していない場合に、令和9年3月31日までに遺産分割が成立しないときは、相続人申告登記を行わなければなりません。そして、遺産分割の成立後に、所有権移転登記を申請しなければなりません。

※正当な理由がないのに相続登記や所有権移転登記の申請を怠ったときは、10万円以下の過料の罰則がありますので、留意が必要です。

★所有者不明土地に関する不動産登記法の改正内容の詳細については、以下のリンク先をご参照ください。
(法務省民事局HP:https://www.moj.go.jp/content/001360818.pdf

 以上